2014年3月23日日曜日

万獣こわい

久しぶりに東京まで観劇に出かける。場所は渋谷のパルコ劇場。本日の出し物は「あまちゃん」の脚本家として知られる(と言って私はそのドラマ見たことないんだが)宮藤官九郎作の「万獣こわい」。なんでも“ねずみの三銃士”と自称する生瀬勝久・池田成志・古田新太らのユニットによる企画らしい。2004年に「鈍獣」、2009年には「印獣」という芝居をリリースしているとか。

題名だけ聞くと江戸川乱歩原作かと思ってしまうので、今回は落語ネタを加えてひねってみたのかなと推測したのだが、当然のことながら彼らの今までの芝居を見ていないのでなんとも言い難い。何であれ、この手のアングラとミーハー系商業演劇の境界を狙った芝居群には多少の関心がある方なので、友人から誘われてホイホイと付いていった訳。

落語の「饅頭こわい」の高座シーンから始まる芝居のテンポは軽妙で、複数の舞台を同時に使って進行させるドラマ展開も判りやすい。中身は2012年に発覚した尼崎監禁連続殺人事件をモデルにしたと思われる、同居者たちの人格支配による殺人の連鎖をテーマにした凄惨とも言えるものなのだが、極限状況の圧力が高まった場面から爆笑を紡ぎだす手腕の見事さには些かならず感心してしまった。

それなのに、正直言って観劇後の気分はあまりいいとはいえない。劇的カタルシスがないのである。疑心暗鬼状況をうまく作り出し、それを利用して人を支配して犯罪行為に自ら染まらせることに長けた人がいるのですねぇ、普通の人はあれには負けてしまうので、いいように振り回されながら、せめて笑っちゃうしかないですねぇ、で終わっていて、肝心の悪意に満ちた「一番怖い人」を笑いの対象にしていないのである。

せめて落語のオチにある「渋茶が一番怖い」に当たる、悪意の腰を砕けさせるようなエピローグがあったなら、この芝居は犯罪爆笑喜劇として演劇界の歴史に残るものになったのではと思わなくもない。

2014年3月6日木曜日

確定申告

ズルズルと引き延ばしていたが、今日ついに覚悟して確定申告のために税務署に出かける。結構朝早く出かけたつもりなのに、着いてみれば既にディズニーランド並みの行列ができている。一時間近く並んだ末に、やっと受付に到着。こちらが請求できる経費は生命保険費と医療費ぐらい。結構ぼったくられるだろうと覚悟して会場のパソコンに向かう。

ちょっと前までは自宅でe-Taxというオンライン申告をしていた。亡き妻の医療費も高額だったのでそれなりに還付もあった。具体的メリットがあると真面目に申告もするが、それがなくなるとだんだんいい加減になり、PCの機種を変えてアプリが使えなくなり、利用者番号やパスワードも忘れ、しばらく途絶えてしまっていた。

なにせe-Taxを利用したせいか、申告の案内も来なくなるのである。必要なことなら催促ぐらい来るだろうと高を括っていた。それが少額とはいえ、一部の年金が振り込まれるようになって、手元に数枚の源泉徴収書が集まり、それらに全て「申告しろ」と強要する文書が添えられていると、さすがの私も遵法精神を発揮するしかなくなったというわけ。

多分、不労所得ともいえる年金の半分ぐらいは召し上げられるんだろうなと覚悟して作業を進めると、結局ほぼ全額に等しい追加納税を指示される。不労所得許さずという、国家の意志を感じる結果である。ちゃんと働け、ズルするな、ラッキー収入は世のため人のために差し出せということであろう。国民を崖から突き落として力を引き出そうという、ライオンの如き国家の親心に感激するしかない。

今月17日までに支払えと言われたが、どうせ払わないといけないのならと、税務署の帰り、銀行によって税金を納付。納税という国民の義務を果たし、意気揚々と帰宅と言いたいが、老後の蓄えがまたこれで減ってしまったという当惑が正直なところ。来年は何があって還付されるよう、あらゆる手段を尽くそうと決心する。