2014年6月2日月曜日

水族館劇場「嘆きの天使」

友人から一週間ほど前、水族館劇場という聞いたことのない劇団が三軒茶屋近くの神社の境内でテント公演をするから見に行かないかというお誘いがある。日曜日の夕方という日程に多少難点はあったものの、どうせすることもない身、ついていくことにした。

はじめに書いてしまうのだが、この劇団、出自は博多方面にあるらしい。それと関係があるのかないのか、とにかく時間感覚がのんびりしている。まず夕方5時半に集合して整理券を貰い、座席を確保する。芝居小屋周辺でプレイベントが始まるのがなんと7時。

お神楽みたいな出し物に始まり、芝居の中身のさわり部分がごちゃごちゃと繰り広げられ、やっと小屋に入場。実際に芝居が始まるのはほとんど8時である。舞台は10時頃には終わるのだが、何だか夕方から半日ずっと芝居に付き合っていた気分だった。

芝居の中身はというと、なんとこれが永山則夫を鎮魂する話なのである。いったい、この芝居を見に来た連中の何割が永山則夫を知っているだろう。手法は60年代後半以降のアングラ芝居の常套手段、種々のイメージの重ねあわせというやつ。時代や権力にまつろわぬ、漂泊の民の歴史の一コマとして永山の悲劇をかさね合わせていくのである。正直言って切り口に手垢がつきすぎていて今ひとつ。

その手垢を洗い落とす手段というわけなのであろうか、この劇団が用意したものは実に大掛かりな大道具。流れ落ちる水、吹き上がる水、水、水、水のオンパレードである。惜しむらくはそれが要所で時々無意味に溢れだすばかりで、余りイマジネーションを掻き立てる方向に繋がっていないのがまことに残念。

こんな無駄なことに(ゴメン)、命をかけて頑張っている人々がいるんだなぁ、ひょんなことから努力が報われるようなことになればいいのになぁと、そればかり念じながら深夜に帰宅し、疲れ果てて寝てしまった。それにしても、あれは噴水劇場ではあったが、水族館劇場ではなかったなというのが寝付く前の最後の感想。

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