連休は結局近くのスーパーに買い物に出かける程度でほとんど家に籠って読書三昧。まだ出しっぱなしだったコタツを片付けるという大作業もするにはしたが、皮肉にもその直後から低気温の日が続いたのには参った。ダウンジャケットでは暑いし、フリースでは頼りないし、まことに過ごしにくい連休だった。
今回の読書テーマはヨーロッパ。何だと言ってはフランドルあたりから東欧の辺りを彷徨うのが好きな友人が薦めてくれた19世紀末プラハ出身の幻想作家、レオ・ペルッツの作品が3冊。それと以前に同じ人から薦められながら放り出したままだったW.G.ゼーベルトというノーベル賞候補を噂されながら早世した作家の作品が一冊。さすがに4日もあったので何とか読めた。
さてまずレオ・ペルッツの「夜毎に石の橋の下で」から話を始めたい。時は16世紀末。所は神聖ローマ帝国の当時の首都プラハ。私は受験で世界史を選択しなかったのであまり真面目に授業を受けておらず、神聖ローマ帝国については、教師が「神聖でなく、ローマでもなく、ましてや帝国ですらない」と言っていたのしか覚えていない。とにかく諸侯の力関係でいつもゴタゴタしていた国だったようですな。首都もあっちに行ったりこっちに来たり。
アルチンボルドという画家が野菜や果物で肖像画を描いたので有名なルードヴィッヒ二世が統治していた時期が、ちょうどこの小説で書かれている時期と重なる。皇帝は統治能力に乏しいというか余り関心がなく、もっぱら美術品蒐集に関心を向けており、宮廷の財政は火の車となっていた。そのためか皇帝は魔術と錬金術に解決を求め、怪しげな詐欺師紛いの人物が宮廷に出入りしていた。(中にはケプラーとかティコ・ブラーエみたいな本物の科学者もいたけど)
ある日、皇帝は街で美しい女性と出会う。それがユダヤの豪商モルデカイ・マイスルの妻である事を知った皇帝は、高徳のラビにとりなしを強要する。ユダヤ人のプラハからの追放の脅しに屈したラビは、彼らが夢の中で逢瀬を重ねられるべく幻術を手配する。しかし、それが神の怒りに触れ、ユダヤ人街には子供たちだけが斃れるペストが蔓延することとなる…。
軽いタッチのコメディかと思って読み始めると、予言とその成就、運命とそれへの対峙の物語として、したたかなボディブローを喰らう一品。やはりヨーロッパ侮りがたし。
先生は素敵な友人をお持ちですね。私は阿呆です。でも昔友人と本の情報交換などをしていた頃を思い出させてもらいました。ありがとうございます。
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