今日は今年二度目にして最後の13日の金曜日である。今日を逃すと来年の6月まで13日の金曜日は来ないので、乏しいネタの一つではあるのだが、あえて話題としたい。と言って、13日の金曜日を不吉な日とするのは英語圏とドイツ・フランスぐらいで、我が国では単なる他国の迷信として知られるぐらいであろう。
それでも他国とはいえ、この手の俗信が妙に根を張っているのは興味を引かれるもので、まして医学領域で真面目に取り上げて考察している論文まであるのは更に興味深い。ここではそうした医学論文の幾つかを紹介したい。
一番有名で、あちこちで引用されるのが、1993年、英国医学雑誌12月号に掲載された「13日の金曜日はあなたの健康を害するか?」というものである。この論文ではテームズ川と交差する高速道路の通過自動車数、スーパーマーケットの来客者数、交通事故による新規入院者数を同年の13日の金曜日と6日の金曜日(当然両者の年内頻度は同じ)で比較したものである。
結論として、13日の金曜日の通過自動車数は6日より優位に少なく、マーケット来客数には変化がないが、交通事故による新規入院者数は65対45という差で増加していた。著者たちは13日の金曜日がアンラッキーな日であるのは明らかとして、その日は自宅に留まるように勧めている。
この論文は明らかにジョークで、まずたった1日の「統計」ですべてを説明しているのが妙。そもそも英国医学雑誌は年末に必ず冗談論文特集を載せるので有名なのである。それでも、今もこの論文は結構引用され(ほとんどがジョークネタとしてではあるが)続けているのである。
医学論文検索サイトPubmedで調べた限りでは、その後13日の金曜日に関して正式な医学雑誌に採用された論文は獣医師によるものを入れて10を数え、無料で読める抜粋が添えられているのはそのうち7つである。
その中でわずかながらでも13日の金曜日に不吉な悲劇が伴うとしているのは2002年、米国精神医学雑誌に掲載されたフィンランドの研究者によるもので、1971年から97年の間の交通事故死統計から、13日の金曜日には女性だけに38%の事故死増加が見られるとしている。
しかし2004年、同じくフィンランドの別の研究者は、1989年から2002年の統計を使って、女性であれ男性であれ、13日の金曜日に交通事故死が増えている事実はなかったという反論を発表している。統計の母集団が違うのだから、これは水掛け論ですがね。
それ以外の6つの論文も、すべて13日の金曜日の影響を否定するものばかりである。一番最近では2012年7月の米国救急医学雑誌に掲載された論文がある。米国バージニア州の6っの病院の救急施設利用者数を2002年から2009年まで7年間追跡し、13日の金曜日に特別な利用者数増加などは見られなかったとする。
ただ、あまりに不吉なことが重なったため、その日には救急施設を利用するまでもなく息絶えた人々が多数いたのかどうかまでは考察していないのが少々難点。
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