その時フィルが自分の影を見たら冬はあと6週間続くが、そうでないと春はすぐそこに来ている、と判定される。この判定が間違っていたことは無いそうで、全米のお天気メディアや物好き人間がこの日、パンクサトーニーに集まり、フィルの御託宣を聞く。要は当日が春先の曇り空の日かどうか、ということがその根拠らしい。
この季節行事の循環する時間というイメージに乗っかって作られたのが1993年のアメリカ映画、「恋はデジャ・ブ」である。原題は"Groundhog day"で、こっちのほうがよっぽど簡潔にして判りやすいのだが、馴染みのない行事名では売れないと判断して、こんな悲惨な邦題になったのだろう。どうせなら「アメリカ節分奇談」ぐらいでもよかったかも。
話は単純で、メジャー指向で嫌われ者の地方局の天気キャスター、フィル(ビル・マーリー)が嫌々グラウンドホッグ・デイの取材にきたところ、永遠に繰り返す2月2日の中に閉じ込められてしまう。様々な努力をするものの、逃れ出ることは出来ない。ビルから飛び降りて自殺してしまっても、結局2月2日の朝6時に元のホテルで目覚めてしまうのだ。
この機会にと、以前から恋心を抱いていたプロデューサーのリタを籠絡しようと様々な努力を繰り返すが、これも全くうまくいかない。何度も繰り返して知り抜いた街中の人々の行動スケジュールを利用して、銀行の現金輸送車の金を奪って、派手な金遣いもしてみるが虚しさは増すばかり。
やがてフィルは繰り返す時間の中で知った町の人々の行動パターンをもとに、彼らに対する無私の奉仕に徹することにする。その結果彼はリタの愛も得て、繰り返す時間もまた普通に流れ始める。そんな他愛もない話なんだが、何故か私はこの映画が好きで、年に3回以上DVDで見る。人が流れる時間を生きながら、繰り返す時間の中に生きているような錯覚を持っていることを、意外な方向から思い起こさせてくれるからである。
さて今年の本家フィルの御託宣は…、と思ってパンクサトーニー市が作っているサイトを覗いてみたがまだ結果が書かれていない。時差のため一日遅れるのを忘れていた。結果は明日追記ということに。まあ、春が近いか遅いかが分かったって、所詮アメリカ北部の話なんだけけど。
追記:先ほど出たばかりのフィルの御託宣は、"Six more weeks of winter". 春はまだまだ先のようです。少なくともアメリカ合衆国ペンシルバニア州では。
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