2013年9月4日水曜日

シンデレラ・リバティ

Youtubeを徘徊していたら、こんな曲を発見。昔読んだことのある小説と同じ題名だったので、なんか関係有るのかと興味が出たので聞いてみる。

歌の方はクールスという「不良」をコンセプトにしたバンドによるもので、もう30年以上もメンバーを変えながら存続しているのだそうだ。舘ひろしとか、岩城滉一が初期メンバーで、横山剣も一時は加入していたらしい。

私は横山剣という人は横山やすしとか、横山ホットブラザースといった大阪のお笑い芸人関係者を出自としていると思っていたので、こんなに昔から音楽畑で活動していたのだということを知っていささか驚きである。

それはさておき、この曲をざっと聞いた限りでは小説の「シンデレラ・リバティ」とは何の関係もないようだ。単に門限のある女の子を口説く歌である。小説の方は、70年代始めにダリル・ポニクサンというマイナーな小説家によって書かれたもので、米海軍水兵の帰隊門限を意味する隠語が題名の由来。浅田次郎にも同じ題名の短編小説があるらしく、こちらは彼の自衛隊体験を書いたもののようで、どうも日米軍事同盟は同じ隠語を使っているらしい。

主人公は神学校を出たものの、自らの語るあまりに軽い神の言葉に人々が簡単に感激してしまうのに嫌気が差し、神父にはならず一介の水兵として海軍に入隊する。夜12時までの自由時間に水兵仲間と盛り場を彷徨くうち、あるシングルマザーと出会う。彼女と子供の世話に「シンデレラ・リバティ」の時間すべてを捧げる主人公だが、女性はある日子供をおいたまま姿を消す。細かな所は違っているかもしれないが、おおむねそんな話だったように思う。

神を捨てた主人公が裏切られながらも無償の愛に目覚めると言う内容なんだが、それにしてもひどい話だと思ったものだ。後年、この主人公と全く同じような体験を通じてうつ病になってしまった人を診療する機会があった。一緒に暮らしていた東南アジアからきた風俗女性に、自分の子供でもない二人の子供を残され、ある日突然去られてしまった男性の症例である。

私ならこの状況を耐えることが出来ないかもしれないなと思うのに、その患者さんは打ちひしがれながらも、何とか立ち直っていったのに驚愕したものだ。毎日の生活費にも窮しながら、消えてしまった女性への恨み言葉ひとつ言わず、幼い子供たちを育てるその男性を見ていると、無償の愛というものはとてつもないパワーをその持ち主に与えてくれるのかもしれないな、と思ったものだった。

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