2013年7月29日月曜日

上行大動脈解離手術の予後に対する季節と月齢の影響について

「月齢と季節が上行大動脈解離手術の予後に及ぼす影響については、広く知られているとはいえない。我々はこれらの院内死亡率や術後生存者の在院日数に対する影響を調査した。」

季節はとにかく、月齢が心血管手術に及ぼす影響など誰も知らないし、そもそも知ろうとも思わないような気がする。それを大まじめにやったのがこちら(リンク先はpdf)の論文。

この論文はロードアイランドの州都プロビデンスにある二つの病院で1996年1月から2011年12月までに上行大動脈解離で手術を受けた210名の患者について、入院時(緊急手術を要する疾患なので、同時に手術時でもある)の月齢と季節を調べている。被手術者は解離修復のみ(多分人工血管置換するんだろうが…、よく知らない)を受けた群と、同時に冠状動脈バイパス術を併用した群の二群にわけられ、それぞれの院内死亡率、在院日数について、月齢、季節双方との関連を見ている。

その結果、冬に死亡率が高い傾向は見られたものの統計的に有意とはいえず、有意性が示されたのは症例の年齢(勿論、高齢なほど死亡率が高い)、糖尿病の有無、そして、月齢であった。とりわけ月齢、それも満月から下弦の半月までに手術を受けた症例の死亡率は明らかに低く、統計的有意性も最も明らかであった。

新月から上限の半月を経て満月に至る時期と、下弦の半月から新月に至る期間の死亡者数が10前後なのに比して、満月から下弦半月までの期間の死亡者は4であった。著者たちは月の重力による潮汐力が体内の血流動態に影響をおよぼすのではないかという考察を行なっている。まあ、明日は満月と言う日と、満月の日で何が違うというのだろうという疑問は残る。

思わずエイプリルフール論文ではないかと思って、提出日をみたら今年の2月で、受諾されたのは6月だった。昔、ロードアイランド医学健康雑誌に掲載されたという「パーキンソン病発症リスク要因としてのエイリアン・アブダクション」というエイプリルフール論文の題目を見つけ、必死に元論文を検索したがなぜかその号だけが保存されていなかった、という経験があるので、もしかしたらロードアイランドという所は医学的プラクティカルジョークが奨励されている土地柄なのかもしれない。

何であれ、もし大動脈解離という大病に見舞われることがあったら、病院に駆けつける前にまずその日の月齢を調べるのを忘れずに。まあ、満月期でないから手術なんか受けないとごねていたら、ほぼ確実な死がやってくるだけのことなんだけれど。


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